キャプ:会員の三木さん(中央)と私(左端)

川野 紀子(あけぼの会副会長・あけぼの兵庫代表) 
akebonohyogo@gaea.ocn.ne.jp

日時:2025年3月6(木)~3月8日(土)
会場:神戸コンベンションセンター

乳がん患者会のリーダーとして、「臨床腫瘍学会」「乳癌学会」「癌治療学会」に並ぶ大切な学会なので参加しました。今年はPAP(ペイシェント・アドボケート・プログラム)が充実していたので、3日間続けてPAP会場で学んで来ました。少し難しいのですがPAP講座には、がん医療やがん対策について広く学ぶ基礎講座と医学研究・臨床試験等における患者・市民参画を推進することで、より良いがん医療のために患者や家族が協働することの重要性を学ぶ応用講座がありました。印象に残った要点をまとめてみました。

【1日目】
◆いきなり、「パネルディスカッション:患者の声を聴く」から始まりました。東京都のがんポータルサイトの話、次にがん患者の横の繋がりが大切なことを確認、そしてがん戦略部会の取り組みの話等、それぞれが関わっていることを患者代表が話されました。
「がん薬物療法のコストを評価する」では、日本は費用対効果を考えずに使う傾向がある。新薬に飛びつかず効果が同じなら従来ある安いものを使おうということでした。
「高額療養費制度」の仕組みや今問題になっていることを詳しく学びました。患者たちは闇雲に反対しているのではなく、自分たちの声を政治に反映させて欲しいと訴えていることを共通認識として持ち、今後も協力し合っていくことを再確認しました。
「がんサバイバーの心臓を守る」では、乳がん患者さんを例にあげて、アンスラサイクリン系薬剤を使った人やハーセプチンを使った人は心筋障害を起こしやすく、数十年後に心不全で亡くなる確率が一般の人より高いことが分かってきたので、フォローアップが必要と腫瘍循環器科からのアドバイスでした。
◆脳は脳幹で守られていて、本来は抗がん剤が届きにくいのだが、エンハーツは脳転移の患者さんの7割に効果があったとの朗報もありました。

【2日目】
「AIが開くがん医療の未来」では、AIは患者に貢献しないといけない、新しいデータには少し弱いが、医師の経験値によって判断が違うということにはならない、診断の責任はAIか医師のどちらが負うのかということになれば、日本では、最終判断は医師がするとのことでした。
「がん薬物療法専門医の役割と未来」では、がん薬物療法専門医がいることで、すべてのがん治療に効果が出て来たそうです。まだ知名度も人数も少ないので、年間100人を目標に専門医を育てていきたいとのことでした。都市部の拠点病院には専門医はいるけれど、地方には余りいないので、地域と人数のバランスが悪く、そこが課題とのことでした。
「高齢がん患者の意志決定支援」では、高齢化社会になり、がん治療をする認知症患者も特別なことではなくなって来ている。認知症支援ガイドラインがある。患者本人の目線に立って、意志決定能力を配慮し、意思決定支援を援助することが必要とのことでした。
「ゲノム医療で推奨された保険適応外薬をどのように使うか」では、日本のがんゲノム医療の現状をまず学び、海外は一人だけの治験、未承認薬を救済のための治験として使っているそうで、日本でも未承認薬を適応外使用ができるようになるといいがということで、患者申し出療養制度について学びました。

【3日目】
 3日目はPAP応用講座で、1日目と2日目の基礎講座をきちんと受けた人だけが参加できるので、人数が少し減りました。レベルが高くて、しんどい講座ではありましたが、興味深い充実した内容の講座でした。
 ◆「治験を含む臨床試験の枠組みについて」「臨床試験と倫理指針について」「治験に参加する前に知っておいて欲しいこと」などを学んだ上で、最後に「グループディスカッション:この治験、あなたなら参加しますか?」を5つのグループに分かれてディスカッションして、グループごとに話した内容と結果発表をしました。HER2陽性乳がん患者さんに対する治験ということで、ファシリテーターを中心に、起こりうる副作用を想定して議論をし合い、自分ならこの治験に参加するか考えました。発表後にはPMDA(医薬品医療機器総合機構)からもコメントがありました。

【最後に】
◆事前に提出したレポートで選ばれた50人だけが参加できるPAPでした。半数の方は今までにいろんな学会で会っていたので、顔見知りでしたが、がんの各部位において日本でトップの患者会を率いておられる方々なので、皆さんからたくさん学ばせてもらうことができて、新たな気付きもありました。お互いに親しくなってくると交流の場では、それぞれの患者会が発展・向上するために感じた意見を率直に言って下さいます。【あけぼの会】は全国組織の患者会というのなら、そのネットワークを最大限活用し、もっと社会貢献ができるのではと言われたので、難しいですが、そこが今後の一つの課題なのかなと思いました。

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